研究者インタビュー

研究者のインタビューをご紹介します。

モノゴトの流れを良くする医師になる モノゴトの流れを良くする医師になる

モノゴトの流れを良くする医師になる

社会のニーズがある研究を求められると「俄然やる気が出る」と語る先端研究本部の西川由理研究員。日々増大するデータと高度化するAIアルゴリズムの適用を可能にする大型計算機を活用した、新しい事業応用に取り組む。入社時から心にとめるキーワードは“架け橋”。点と点をつなぎ、その間を行き交う人やモノ、情報の流れを可視化し最適化する研究に打ち込む西川が目指すAIとは、その流れを良くする「医師のような存在」だ。

ショッピングセンターや大型倉庫、競技場といった多くの人が行き交う場所で、行動や興味を分析し、企業の戦略分析や作業効率の向上に役立てる。西川がいま、AIで取り組むミッションだ。人の数が多くなり、空間も広くなればなるほど、計算量も膨大になるため、グラフ理論や並列計算を駆使して分析の誤差や遅延を減らしていく。

インタビュー風景

「本質は変わらない」

いじるのが好きだったパソコンが、どう動くのか仕組みを知りたい。そんな思いから大学では、大型計算機やコンピューターアーキテクチャーの世界にのめり込み、博士課程まで進んだ。研究室に残らずに就職を志したのは、自分がビジネスの世界でどの程度通用するのか試したかったから。大学の同期が先に就職したパナソニックは手掛ける事業の範囲が広く、研究にも多様な選択肢があるイメージはあったものの「『これがやりたい』という確たるものはなかった」。

そんな西川はいま、それぞれの専門を持った研究員や様々な職種の社員と議論する中で、次第に研究テーマの「ピントが合っていく」ことに喜びを感じる。会社の方針変更や社内の配置転換があると、学生時代のように1つの研究を追い続けることは難しいと感じることもある。だが、それは時代のニーズ変化とともに、自身の何を変え、何を変えずにいるべきか考えることを求められることでもあり、「色々な波に乗ることによって、自分が目指す、変わらない本質に気付く」。

インタビュー風景

コミュニケーションが生む、気づき

研究で目指すのは、人やモノの流れの中から、「暗黙知」を発見すること。例えば、各業界で人手不足が課題になる中、引退が近づくベテラン技術者も多い。彼らの動きを分析し、非熟練者との違いを明確化できれば、「背中を見て学ぶ」、「技を盗む」――、そんな非言語的なコミュニケーション手段で伝わってきた技術の伝承につながるのではないかと考える。

研究者としてどんな存在を目指すのか、入社時に問われ「架け橋になる」と答えた西川。そのために大切にしているのは、他者とのコミュニケーションだ。議論をすることで、はっと気づく、ピンとくる――。そんな瞬間を増やすことで、求められているものや目指すことに気付く。ある工学システムの中に人間が入ると、なんて複雑で難しくなるのだろうと思う。けれど、「難しいことは魅力的」。そんな探求心で、今日も仲間とのコミュニケ―ションを重ねている。

西川 由理

西川 由理

イノベーション推進部門 先端研究本部
基盤技術研究部 インフォマティクス研究課

慶應義塾大学 理工学研究科 開放環境科学 博士課程修了。博士(工学)。
2017年より、産業技術総合研究所 人工知能研究センターに出向、大規模計算技術とAI技術活用による研究開発と産業応用を推進。
同社研究員としてインタフェース開発に関わった経験から、人間行動の計測やシミュレーションに興味を持ち、並列計算機を活用した動線分析とその応用に取り組んでいる。
専門領域は、並列計算、ハイパフォーマンスコンピューティング、動線分析。