企業でのAI研究を成功させるためには、以下の2つの要素が必要である。
まず、成功しているAI研究部門の組織体制として、Google が買収したDeepMind、大学のチームから立ち上げられたFacebook AI Research(FAIR)、また営利を目的としないOpenAIのように様々なアプローチがある。
これらの組織の運営で類似しているのは、安定的な研究チームとオープンコラボレーションを提供して、長期に挑戦的なミッションにフォーカスしていることである。現在のAIのように競争が激しい環境で成功するには、中長期に安定した運営体制を確保することが必須である。
その次の段階でイノベーションを製品に引き継ぐためには、短期の予算獲得のプレッシャや直接のレポート体制を避けながら、事業部門と活発に交流をさせることが重要である。エンジニアとサイエンティストの快速な交流は、遅くて煩雑なレポート体制によってではなく、R&Dグループと製品グループが同じ建物にいることで生まれる。
2つ目の要素は、研究の進め方に関することである。世界クラスのAI研究プロジェクトは、企業や大学の多くの研究機関の協力で進んでおり、早期のソースコードや結果の公開が非常に重要なファクターとなっている。アイディアを保護するためには、研究成果やソースコードをarXivやGitHub等に早期に公開することが、特許出願に代わってコスト効果が高い手段である。価値ある研究を机の引き出しにしまったままにしておくことは、どの会社にとっても得にならない。なぜならその技術が受け入れられることはなく、開発が行き詰るからである。積極的に情報やソースコードを公開することが、今日の急速なAIの進歩の大きな要因となっている。AI分野の研究者がどんなに懸命に研究したとしてもオープンソースのエコシステムへの貢献なくして、成功を収めることはできない。